#08
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鮮やかに、彩り継がれる湖畔の館

第8回
「びわ湖大津館」


雄大で穏やかな琵琶湖の景色を眺め、約5,900平方メートルのイングリッシュガーデンには、薔薇をはじめ四季の花々を楽しめる、びわ湖大津館。湖畔に建つ荘厳なその姿に、和洋織り交ぜ、日常を忘れさせてくれる時空間を味わえます。大津市指定有形文化財、近代化産業遺産認定としても認定されるこの建物は現代の建築家も学びに訪れるほどの作品。多くの著名人をもてなした旧琵琶湖ホテルは、現在は市民の活動の場として広く利用されています。

地域が誇る自慢のホテル

旧琵琶湖ホテル
旧琵琶湖ホテル

 旧琵琶湖ホテルが開業したのは、昭和9年(1934年)のこと。海外からのお客様を迎え入れる迎賓館として建設され、設計を、東京歌舞伎座や大阪市中央公会堂などで名を馳せた建築家の岡田信一郎氏が手がけました。社寺建築をモデルとし、桃山様式と呼ばれる外観ながら、インテリアには西洋のテキスタイルや文様を用いながら格式高いデザインを施しており、心意気を感じます。「当時では最高の出来だった」と、案内してくださった副館長の若代光弘さん。昭和天皇をはじめとする皇族の方々やヘレンケラーさん、美空ひばりさんや石原裕次郎さんといった名だたる著名人を迎えました。

市民のために生まれ変わる

生まれ変わった「びわ湖大津館」
生まれ変わった「びわ湖大津館」

 やがて浜大津へのホテル移転計画をきっかけに、平成10年にホテルは閉館となります。そのとき、思いもよらない事態に取り壊し工事はストップ。同館を惜しむ市民の声が挙がったのです。憧れの琵琶湖ホテルは、宿泊客だけでなく大津市民をも魅了し、地元の誇り高き建築物として親しまれていたのです。市民の強い声に心を動かされた大津市は、本館のみを市の指定文化財とし、市民が集う「びわ湖大津館」として残すことを決めました。

あたらしい感性との調和

当時の趣をそのままに

 レストランや結婚式場、多目的ホールとして生まれ変わり、再び市民から愛される存在となったびわ湖大津館。当時の趣をそのままに、県内外や海外から訪れる人々をも楽しませてくれています。

 目前に広がるイングリッシュガーデンには、300種類3,000本のバラが植えられ、広がる琵琶湖に華やぎを与えるだけでなく、冬場にはイルミネーションを実施。大津市との地域連携を目的に、成安造形大学の学生の創作によって、冬の夜を賑わせています。

光のおもちゃの世界
光のおもちゃの世界

 この冬のテーマは「光のおもちゃの世界」。おもちゃ箱をひっくりかえしたような遊び心いっぱいの庭園に、子どもたちは大喜び。クレヨンやボール、くまのぬいぐるみ、ジグソーパズル、絵本、プレゼントの入った箱…寒さも感じさせないほどの心あたたまるおもちゃの立体造形は、学生たちが3人ずつ、5つのエリアに分かれて担当しました。

 「影絵を立体的に表現できたらおもしろいなと思った」と影絵の絵本を創作したのは、芸術学科空間デザイン領域の竹崎天さん。また22本のクレヨンを創作した芸術学科空間デザイン領域の生田和輝さんは「落書きをしているときのワクワクを子どもたちに感じてほしい」それぞれにおもしろみをもって生み出された作品の数々。実は、普段学んでいない専門外の領域にあえて取り組むことによって、デザインの幅を広げるチャレンジでもありました。

 「お子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、キラキラとした気持ちになってほしい」と語るのは、芸術学科情報デザイン領域の村尾明音さん。自身の創作がお客様に喜んでもらえる実感は、大きな学びになるといいます。

人から人へ、心で未来に受け継がれる

びわ湖大津館イルミネーション
びわ湖大津館イルミネーション

 建築に携わる人の高き志が市民の心を動かし、85年もの歳月を経てもなお人々を魅了するびわ湖大津館。世代を担う学生たちの感性によって子どもたちへ、彩を添えられながら親しまれ、語り継がれていきます。本当に残るものは心で伝わり、愛され続けるもの。喜びは時代をこえても分かち合えると教えてくれているようです。

びわ湖大津館2019イルミネーション

「光のおもちゃの世界~湖畔に広がる幻想的な『光の庭』~」

  • 期間 2020年2月14日(金)まで
  • ライトアップ時間 17時~20時30分
  • 料金:(イングリッシュガーデン入園料)
    大人260円、小中学生・65歳以上100円
「びわ湖大津館」公式サイト

http://www.biwako-otsukan.jp