#41
#41

誰もが笑顔になる楽しい料理
大津市 DINING STUDIOコルク

第41回
誰もが笑顔になる料理「コルク」


ウニのパスタはイタリアン。白身魚はフレンチの手法で。
お客さんの笑顔あふれるごはんやさん、コルク。
理想とする店のあり方は、“食べたいものを一緒に作る”。
Good Sign 第41回は、オーナー石田シェフがコルクに込めた思いと、オープンに至る道のりをご紹介しました。

“食べたいパスタを作ります”

食べたいパスタ
食べたいパスタ

 JR大津駅から琵琶湖側へ歩いて2分ほどのところに、その店はあります。名前は「ダイニングスタジオ・コルク」。

 木の温もりを基調にしたナチュラルな雰囲気の店内で味わえるのは、イタリアンがメインの創作料理。腕を振るうのは、地元大津出身のオーナー石田武志シェフです。この道28年、4年前にこの地に店を構えました。

 コルクという店名に込められているのは、「ワインやシャンパンをもっと気軽に」という思い。自ら吟味したお酒とともに、パスタやピザだけでなく、一流ホテルでフレンチの腕を磨いた経験から多国籍な料理を提供し、肩のこらない地域のごはんやさんとして愛されています。

 石田シェフは自分の店をもつ際、決めたことがあるといいます。それは、「笑顔あふれる楽しい料理を作る」こと。「食べたいパスタをお作りします」というメニューの1行にお客さんの笑顔を引き出したいというその思いが見てとれます。

 「あるお客さんが『冷製パスタを食べたい』とリクエストされたときのこと。
『まじめに作るのがいいか、ふざけたほうがいいか、どちらがいいですか』と尋ねたところ『ふざけたほうで』とおっしゃって、じゃあ冷やし中華にしよう、と(笑)。意外じゃないですか、こうした店でパスタの冷やし中華が出てくるのって。そのできあがりに、お客さんは目を丸くした後、すごく笑ってくれはってうれしかったですね」

「おいしい」のひと言のために全力を

石田シェフ
石田シェフ

 お客さんを笑顔に、という石田シェフの理想の背景には、子どものころの思い出があります。小学校を卒業するときには、すでに「将来はコックさん」と決めていたとか。

 「休日に朝ご飯を父親が作ってくれたりだとか、そういう姿を見て僕も作りたいなと思ったのがきっかけです。初めて作ったのは、ホットドッグですかね。ただパンを切ってソーセージをはさんだだけのものですけど(笑)。でも両親はおいしい、おいしいと食べてくれた。いまもそうですが、自分が作ったものをおいしいといってもらえる。そのひと言のためにやっているのだと思います」

 とはいえ、味の好みや気分は十人十色。すべての人からおいしいという言葉を引き出すのは難しいものです。だからこそ「メニューにないけど、こういうのが食べたい気分だからできない?」と要望されたら作るのが石田流。

 「それを無理というのはイヤ。酸っぱめや辛めなど好みさえ教えてもらえれば、全力で近づける。お客さんが食べたい料理を一緒に作っていくような、料理のオーダーメイドができるみたいな。そうした店があってもいいんじゃないかな、と僕はいつも思っています」

 休憩なく1日中、厨房に立ち続けられるほどの料理好き。それも独りよがりではなく、常にゲストファーストで仕上げる一皿一皿で、コルクはファンがファンを呼ぶ店になっています。

修練を重ねて見つけた自分の理想

コルクの調理
コルクの調理

 いまでこそ創意あふれる料理で常連客をうならせている石田シェフですが、ここまでの道のりは決して順風満帆ではありませんでした。そのスタートは、びわ湖大津プリンスホテルにあるバイキングレストランの厨房。たくさんの先輩に恵まれ、和洋中と幅広いレシピを伝授されたといいます。

 「当時のあだ名はイノシシ。目の前のものだけに突進して、すぐ横で鍋がふきこぼれていても気づかないぐらい周りが見えていないからイノシシだと。それで、多分僕コックさんムリだな、と落ち込むこともありました。でも、逃げたら負けと自分にいい聞かせ、ダメだダメだと怒られ続けているうちに、気がつけば多くの料理を同時に調理できるようになっていました」

 次に移ったザ・リッツ・カールトン大阪では、フランス人シェフからフレンチの奥深さを学ぶなど、計10年ほどホテルで腕を磨いた石田シェフ。ただ、ホテルでの仕事は、料理長の味を再現して作ること。

 「自分ならこういう味にするのになと考える年になりまして、じゃあ一度試してみたいなと。自分の味がお客さんに受けるのか通用するのか。それで、ホテル勤めに区切りをつけ、地元の大津に戻りました」

 自分の味を試すのに選んだ職場は、女性客の多い洒落たダイニングバー&カフェ。料理長を務め、華やかな盛りつけやかわいらしい見栄え、女性好みの味のレシピをスタッフと一緒になって次々に生み出します。いずれも、ひと目見て女性客が「わぁっ」と喜ぶような料理。ここでの10年間が、儲けより「お客さんを笑顔にする」「一緒に作っていく」ことが理想のコルクのオープンへとつながりました。

足を延ばしてでも味わいたい楽しい一皿

コルクの料理
コルクの料理

 ひとつのフライパンで食材を焼き、続いてソースを作る。石田シェフが得意とするのは、そんな食材とその旨味を活かしたソースが一体となった料理です。例えば、フレンチの手法で仕上げる「真鯛とキノコのフリカッセ」がそう。フリカッセとは、生クリームなどを使った魚や肉のクリームソース煮のことで、フランスではおなじみの家庭料理です。

 こうしたアラカルトはもちろん、ぜひ味わってみたいのが前職の経験が活かされた前菜。クリーム系かトマト系か揚げものか、食材と相談しつつ自ら食べたい、作りたいと思ったものを10種類ほど一皿に。「ちょっとずつ、いろいろとおいしいものを」という女性のわがままを叶えてくれて、酸・苦・辛といった味のバランスも絶妙の名物メニューになっています。昼は、この前菜をバイキングスタイルで味わえてお値打ちのパスタセット、ピザセットのランチセット2種類を用意。女性を中心に評判を呼んでいます。

 「あだ名で呼んでもらえるくらい、お客さんと僕の距離が近い店でありたい」と石田シェフが語るように、雰囲気はアットホーム。おいしくてお洒落で駅近、しかも「こんなパスタがあったらな」という希望を叶えてくれる店は、そうはないはず。食通ならずとも、県外からでも足を延ばしたくなるところです。

 どんな一皿が待っているのか、ちょっと胸を高鳴らせてドアを開ければ、料理が大好きな石田シェフの笑顔と、思わず顔がほころぶ楽しい料理が迎えてくれるでしょう。

[食べログ] コルク

URL:https://tabelog.com/shiga/A2501/A250101/25008715/