#18
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疫病退散、天下の奇祭。
「近江八幡 左義長まつり」

第18回
「近江八幡 左義長まつり」


チョウヤレ! マッセ! 
威勢のいい掛け声とともに、左義長が町を練り歩きます。町の威信と誇りをかけて、ぶつかり合います。そして、疫病退散の祈りを込めて、天高く燃え上がります。

全国各地に伝わる左義長

天下の奇祭

 平安時代、宮中で打毬(だきゅう)と呼ばれる遊戯が行われていました。それに用いる道具を毬杖(ぎっちょう)といい、その遊戯で破損した毬杖を集めて焼いたことが、左義長(さぎちょう)の起源とされています。毬杖を三本結わえ立て、歌いはやしながら焼いたとも伝えられ、古い文書には「三毬杖」や「三毬打」とありますが、いつしか左義長になったようです。

 わが国の伝統行事や儀式には火を焚くものが多くあります。古来、人々は火に畏敬の念を抱き、信仰の対象として崇めてきました。祭りの火もまた神聖なもの。燃え盛る炎には浄化、鎮魂、祈念、神霊の送り迎えといった意味が込められています。そうした火祭りの代表的な一つが左義長です。

 左義長は、一般的に「どんど焼き」「さいと焼き」「ほっけんぎょう」などとも呼ばれ、1月15日を中心とした小正月に全国各地で催されています。門松やしめ縄などの正月飾りを家々から集めて焼き、無病息災や家内安全、五穀豊穣を願う火祭りです。子どもを中心とした行事になっているところも多く、また、新年の風物詩らしく餅や団子を焼いて食べ、一年の健康を祈ります。

 このような、各地に伝わる左義長のなかでも“天下の奇祭”と称され、国選択無形民俗文化財となっているのが「近江八幡左義長まつり」です。

人類の歴史は疫病との戦い

パンデミック

 洋の東西を問わず、紀元前の昔から人々は疫病に苦しめられてきました。疫病とはつまり、昔でいえば流行病(はやりやまい)、伝染病、今でいうところの感染症です。エジプトのミイラからは天然痘の痕跡が発見されています。

日本でも奈良時代から大流行を繰り返した天然痘は1万年前から存在すると考えられており、1979年に根絶されるまで、世界中で多くの命を奪いました。14世紀の中頃にはヨーロッパをペストが襲います。皮下出血で体が黒ずむため黒死病と恐れられ、60~90%という極めて高い致死率で、当時のヨーロッパ全人口の約4分の1に当たる2500万人が犠牲になりました。

1918年から20年にかけては新型インフルエンザが全世界で猛威を振るいました。感染者数は推計5億人、史上最悪の疫病といわれる「スペイン風邪」です。その後も“新型”はたびたび現れ、人類を脅かし続けています。

近年の感染症では、2002年にSARS、その10年後にMERS、そして2020年には新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが起きました。医療が目覚ましい進歩を遂げた21世紀においても、「疫病退散」は私たちの切なる願いです。