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湖国に春を呼ぶ長浜盆梅展

第11回放送
「湖国に春を呼ぶ長浜盆梅展」


雪のようにおぼろげな白梅。命の息吹を色に表す紅梅。昭和の初期から半世紀超に渡って親しまれている長浜盆梅展。Good Sign第11回は、“日本一の盆梅展”長浜盆梅展の魅力と、それを支える地元の方々の想いをご紹介しました。

数百年の時を超えて咲く梅の古木

古木に満開の花

 滋賀県東北部に位置し、豊臣秀吉が築いた長浜城など戦国武将の足跡が数多く点在する長浜市。この地で例年、年明け間もなく開幕し、湖国の新春の風物詩として親しまれているのが長浜盆梅展です。1952(昭和27)年に始まり、今年2020年に69回目を迎えました。関西圏だけでなく、全国から例年約5万人が訪れ、歴史、規模ともに“日本一の盆梅展”と謳われています。

 盆梅とは、その名の通り鉢植えした梅の盆栽のこと。期間中は、約300鉢の中から早咲き、中咲き、遅咲きと開花時期に合わせて梅の鉢が入れ替えられ、常時約90鉢が展示されます。

 会場へ一歩入ると、春の香りが立ちこめる中、満開の花をつけた古木、巨木がずらり。樹齢はたとえば、盆梅展始まって以来展示が続く一重白梅の「昇龍梅」なら伝250年。八重紅梅の「不老」や「高山」は、なんと400年と伝えらえています。樹齢だけでなく堂々たる風格、樹形の妙、鉢との調和と一鉢一鉢に異なる世界が感じられます。

 盆梅を一際美しく見せるのが、会場の慶雲館。1887(明治20)年、明治天皇行幸に際して地元の名士が建てた迎賓館で、命名は初代内閣総理大臣の伊藤博文。庭園は、古都の数々の庭園を手がけた七代目小川治兵衛の作で、国の名勝に指定されています。格調高い純和風建築と、みごとな盆梅との競演を楽しめるのは、長浜盆梅展ならではの魅力です。

盆梅を通じて広がる人々の輪

長浜盆梅展
長浜盆梅展

 長浜盆梅展は、1951(昭和26)年、現在の長浜市高山町に住んでいた故高山七蔵氏が、大切に育てていた盆梅約40鉢を市に寄贈したことに始まります。それが現在の規模になったのは、盆梅を通じた人々のつながりがあったからだと主催者で、盆梅を管理する公益社団法人長浜観光協会の“花咲おにいさん”こと金子遼さんは語ります。

 「来館者や地域住民の方々から寄贈されたものも数多く、こうした広がりで成り立っているのも、長浜盆梅展の特徴です。また、従来の本館展示とは別に、新館では好評を博した昨年に引き続き、京都造形芸術大学のプロジェクトチームによる斬新な展示も。大阪天満宮の『てんま天神梅まつり』とコラボするなど、地域を超えた広がりも見せています」

 期間中は、会場を中心に俳句まつりやフォトコンテストなど多彩なイベントも開催されています。この機会に長浜をめぐるなら、「長浜浪漫パスポート2019-20」(有効期間~2020年9月30日)を使うのも手。1,000円で慶雲館や長浜城歴史博物館など、市内の主要観光スポットから5施設を選んで入館できてお得です。

 「長浜盆梅展が60回を数えた2012年には、地域に溶け込み、市民に親しまれていることから、梅が長浜市の花にもなりました。ぜひ足を運んでいただき、花や枝ぶりはもちろん、来館してこその梅の香りもお楽しみください」

盆栽は世界でも人気の“生きたアート”

盆梅は生きたアート

 盆梅は花を楽しむ盆栽の一種ですが、盆栽にはこのほか、松や杉などを楽しむポピュラーなもの、実や紅葉を楽しむものなど、さまざまな種類があります。シニア層の趣味といった印象もありますが、最近では若い世代の愛好家が増えており、海外でも「BONSAI」の名で人気が高まっています。

 こうした盆栽文化の歴史は大変古く、その起源は諸説ありますが、2,300年前の中国だといわれています。最古とされる記録は、1,300年前にあたる唐代前期の皇太子の墓で発見された壁画に描かれたもの。皿のような器に石や植物が載せられ、花や緑が盆栽スタイルで楽しまれていたことがうかがえます。

 日本には「盆景」の名で平安時代末期から鎌倉時代にかけてもたらされました。中世の絵巻物『西行物語絵巻』や謡曲『鉢木はちのき』、江戸時代の浮世絵など、数々の古典や資料にも描かれており、日本に根づいていった様子がわかります。明治時代に入ると、樹形作りの技法なども発展。「盆栽」という名は、このころ生まれたそうです。

 盆栽が悠久の歴史を刻み、今や世界で愛されている理由はといえば、ひとつは生きた芸術だからでしょう。単なる園芸ではなく、日常の世話に加え、樹形の美しさやバランス、鉢と植物の調和といった美的感覚が必要です。小さな鉢の中に大きな自然を創造するという、茶の湯にも似た精神文化も感じられます。盆栽は、魅力の尽きない日本の伝統文化なのです。

盆梅の驚きの生命力を未来へつなぐ

古木の生命力

 盆栽と同様、長浜盆梅展の盆梅も鉢の植え替えやせん定、こまめな肥料やり、病害虫予防のための消毒など、1年を通して慎重な管理が欠かせません。盆梅展の新たな顔を発掘するため、古木や巨木探しも大切な仕事です。手間ひまかかる作業の中、励みになっているのが毎年楽しみにしている来館者がいることだと、金子さんは語ります。

 「来館される方々は、芸術性だけでなく、その生命力に心を打たれるようです。たとえば、樹齢400年という古木。朽ち果てたような古木から芽生えた、みずみずしい命のつぼみを見つけたときの驚き。そして、4世紀に渡る時の流れを見てきた盆梅が今、私たちと同じ時間を過ごし、同じ景色を見ているという命の神秘。だれをも魅了する命の輝きを、私たちは次の時代へとつないでいきたいですね」

 今年は例年に比べて暖冬傾向です。そのため、いつもより早く咲いている遅咲きの梅もあり、多くの盆梅が見ごろを迎えているとか。400年のときを見すえてきた梅の花たち。戦国時代の表舞台だった長浜で花開くのも、なにかの縁かもしれません。

長浜盆梅展
  • 会場:長浜市慶雲館(長浜市港町2-5)
  • 開催期間:2020年1月10日~3月10日