#50
#50

気持ちを包み、届ける。
滋賀県守山市「ふくさ 清原」

第50回
ふくさ「清原」


包む道具のひとつ「ふくさ」。
それは日本人ならではの心づかいであり、 やさしさと思いやりのカタチです。
Good Sign第50回は、ふくさの伝統を継承する専門メーカー清原の取り組みを通して、日本の包む文化の魅力をご紹介しました。

優しさあふれるふくさの語源

ふくさ
ふくさ

 「ふくさ」は、冠婚葬祭といった特別な日にかかせない道具であり、日本の包む文化を象徴するものです。この文化の特徴が、祝いごとは右包み、お悔やみは左包みという作法。奈良時代、719年に時の天皇が服を身につける際の決まりを右前にそろえたことから始まったといいます。

 ふくさや風呂敷といった包む道具の起源をたどると、そのルーツは室町時代、大名が風呂に入る際、衣類を包むなどした布だとか。江戸時代には、銭湯に行く際の風呂道具を包むのに使われ、こうした流れが風呂敷という呼び名につながり、やがて商品の持ち運びなど用途が広がったようです。

 ふくさは、大事な贈答品を包むのにも使われた風呂敷が原型とされています。当初は、盆にのせた金品や水引が汚れないようにと掛けた「掛けふくさ」という四角い布でした。時を経て、現在では「金封ふくさ」といった簡易タイプもおなじみに。ふくさや風呂敷といった包む道具は、包む作法が生まれて1200年にわたり、日本人ならではの心づかいを示すカタチとして育まれてきたのです。

 「ふくさの語源は、一説に“ふくさめる”という言葉だといわれています。“包む”という言葉に対して相手を思いやるニュアンスの言葉で、ものをふんわり優しく包むという意味があります」

 そう教えてくれたのは、滋賀県守山市に本社を構える国内でも数少ないふくさ専門メーカー、株式会社清原の清原大昌代表取締役です。(株)清原は、現社長の祖父が始めた風呂敷の加工業がルーツ。不思議にもその社歴は、ふくさと風呂敷の深いつながりを想起させます。

包む文化に見る美意識と奥ゆかしさ

清原の丁寧な技術
清原の丁寧な技術

 株式会社清原は、1968(昭和43)年創業。薄い生地をたわませず、美しく縫製する優れた技術をもち、現在は国内シェアの約45%を占める年間約60万枚のふくさを製造しています。コンセプトの「おもいやりをふくさめる」とともに大切にしている合言葉が「“もの”と“こころ”をやさしくつつむ」。

 「ふくさに包むという所作は、相手のことを思いやり、その思いを伝えることです。そこが日本独特の文化であり、日本人の美意識なのだろうと思います」と清原さん。
 
 この包む文化が発展したのは、前述の風呂敷のルーツと同じく室町時代で、贈答や礼式においてものを和紙で包む方法が次々に生まれ、「折形(おりがた)」と呼ばれる武家の作法として浸透しました。
 
 包むことを作法と考えた日本人の美意識は、身近なところにも生きています。たとえば、お年玉や心付けを入れる「ぽち袋」。これは、芸事で役者に渡すお金を紙に包んだ、いわゆる「おひねり」が原型だとか。「ぽち」という言葉は、「少しだけ」という意味で、そこにも日本人らしい謙虚さが見てとれます。

 冠婚葬祭で現金を手渡す際も「のし袋」に入れたうえ、さらにふくさで包む。この「贈りものを丁寧に渡す文化」も、奥ゆかしさの表れといえるでしょう。
「尊敬しています、リスペクトしていますということを伝えるために、大事に包む。それは同時に、自分自身の気持ちを清らかにするものではないでしょうか」

かけがえのない存在を大切に包む

新生児向けおくるみ
新生児向けおくるみ

 ふくさは特別な日に使うもの。でも、日常にも包む文化を取り入れてもらい、暮らしを彩りたい。そう考えた清原では、近年ふくさの新たな可能性を提案しています。

 たとえば、母子手帳を入れる「母子手帖ふくさ」。“包む”という伝統は大切にしつつ、気軽に使えるものをと開発し、自社ブランド「和奏(わかな)」を通じて発信中。

 「娘さんにお子さまが誕生したときにご両親が贈られるなど、大切な人に記念になるものを、というお気持ちのある方に好まれる商品になっています」手応えを得るとともに、自社の技術がベビーやキッズ向けの商品にも適しているのでは、と想を得た清原さんは、次の開発へと踏み出します。誕生したのが、生まれたばかりの赤ちゃんを包む「新生児向けおくるみ~kokurumi~(こくるみ)」。これは、地域の子育て情報誌「ママパスポートもりやま」読者ら現役ママの発案を取り入れたもの。ママパスポート代表の廣瀬香織さんは、企画の意図をこう語ります。

 「子どもは、お母さんにとって特別な存在です。ふくさも特別なものを大切な人に届けるときに包むもので、お母さんの子どもに対する愛情ととてもつながります。特別な存在を大切な人にお披露目するときにぴったりだと思いました」

新たな伝統のカタチに宿る原点

風呂敷からエコバッグへ
風呂敷からエコバッグへ

 「kokurumi」は、首がまだすわらない新生児から安心して使えるように安全性も追求しながら、1年がかりで完成。子育て世代の視点を反映したことも決め手となり、今年2020年の春、「日本ギフト大賞2020」(日本ギフト大賞選考委員会主催)の最高賞「ふるさとギフト最高賞」に輝きました。清原さんは、この商品を通して使い手の声を直接聞く機会が増えたといいます。

 「お買い求めになる世代層はやはり祖父母の方が多く、『退院の日には、このおくるみに包まれた孫の顔が見たくて』というお声をいただいたときは、作ってよかった、作り甲斐があったとうれしく思いました」

 今秋には、ママパスポートもりやまと再びタッグを組み、「あって良かった!エコバッグ」をテーマに開発した「coconi-ココニ- ママの声から生まれたスマートなサブバッグ」も発表。こうした新商品も、ふくさの文化に通じているといいます。「ふくさとは一見違うものですが、エコバッグはいまやファッションの一部でもあり、美意識という点でつながっています。大切なもの、大切に思う心を包むという原点も同じ。私たちのやっていることも一本筋が通っているのではないか、日本人の美意識を体現していることは揺るがないと、自信を持っていえるところでもあります」

 古き良き文化の精神を宿したモダンなアイテム。「kokurumi」や「coconi」には、作法や所作といった枠を超え、身近な存在として浸透していく伝統文化の柔軟さといったようなものが感じられます。

心を伝える現代のツールとして

伝統を次世代に継承する
伝統を次世代に継承する

 一大消費地の京阪神から近く、琵琶湖に象徴される水資源の豊かさもあり、ものづくりが発展してきた滋賀県。国内で唯一、綿・麻・絹という天然繊維の3産地を有する地でもあります。清原では、長浜の絹を使った「ジュエリーふくさ」など、地場産業の素材も積極的に取り入れ、「Made in Shiga」のものづくりにこだわってきました。

 こうした和の伝統美、滋賀の魅力が感じられる数々の商品は、「和奏」のオンラインショップでも販売しています。のぞいてみると「kokurumi」や「coconi」をはじめ、ふだん使いにもプレゼントにもぴったりなものばかり。

 このような包む道具がいま求められている役割について、清原さんはこう話します。

包む道具の専門メーカー「清原」
包む道具の専門メーカー「清原」

「現代は、メールやSNSといったオンラインでの交流が広まっていますが、顔を合わせて言葉を交わすことは、根本のコミュニケーションのあり方。包む道具は、単に“ものを贈る”のではなく、人と会い“心を贈り合う”ためのツールだと考えています。包む道具は主役にはなりませんが、人の品位を高めるものでもあり、その意味でも大切だと思います」

 思いやりの心を伝える作法とカタチ。時が移り、暮らしの様子が変わっても、人と人との絆を結ぶ包む文化は、これからも変わらずに受け継がれていきます。

株式会社清原

公式サイト:http://kiyohara-net.co.jp/

袱紗・ふくさの通販 和奏

オンラインショップ:http://www.wakana-fukusa.jp/