#49
#49

未来へつなぐ。
音と人とが出逢う街。

第49回
大津ジャズフェスティバル


すがすがしい秋の休日、琵琶湖岸から聴こえてくる音に誘われて足を止め、ジャズのリズムに身をゆだねると、心躍りだすひとときを楽しめます。空高く雄大な湖をバックに繰り広げられる大津ジャズストリート。今年は新型コロナウイルス感染症によって開催が危ぶまれた中、イベントを愛する人々と実行委員の努力による実現となりました。

琵琶湖を舞台に、音楽と街あるき

大津湖岸
大津湖岸

 日本のみならず世界各地でも開催されているジャズフェスティバルは、屋内外のステージや街中で開催される音楽ライブを楽しめるイベント。足を運び、近隣の観光地やお店を楽しみながら、今まで知り得なかった土地の魅力や地域の人とのかかわりを感じることができる、町おこしとしての効果も期待できます。

 大津ジャズストリートもその一つ。毎年秋には、湖畔を中心にさまざまな会場で行われるライブや街あるきを楽しむ人々で賑わいます。琵琶湖をはじめ歴史的建造物や風情残る町並みをも堪能できる“世界一美しいジャズフェスティバル”は、今年で12回目になりました。

市民がつなぐジャズで賑わう街

ジャズで賑わう
ジャズで賑わう

 初代実行委員長である、故・小山清治さんは、ジャズを愛する一市民でした。閑散としつつある街の状況に、何かできないかと考えたのがきっかけで、市の中心市街地活性化計画のバックアップ体制もあり、2009年の第1回開催が実現しました。

 現在、実行委員は12名のボランティア。運営を協賛金や募金、グッズの売り上げなどでまかなうという、100%市民による手作りで続けられてきたイベントです。

 副実行委員長の松宮未来さんは、結婚を機に大津に移り住みました。地域で楽しいことに参加したいと、手を挙げたといいます。準備の大変さに嫌になる瞬間もあるそうですが、人の輪が広がっていくことが楽しく、「今年も会えたね」とお客様に言っていただけることが元気の素だといいます。

可能性に賭けたい!たとえ数パーセントでも。

実行委員1

 2020年3月、例年なら準備を開始するこの時期に、新型コロナウイルスは日本中で猛威をふるいます。徐々に失われていく街の活気、先行きの見えない状況でした。近隣の高槻ジャズストリートやびわこJAZZ東近江といったイベントは中止を発表する中、緊急事態宣言が明け、6月に集まった実行委員会は、誰もが開催に前向きだったと言います。
 
 そこには、創始者である故・小山清治さんへの想い。現在の実行委員長である丹羽誠さんは、「人生をかけて立ち上げたフェス、一度辞めてしまえば今まで繋いできたものが途絶えてしまう。どのような形でも開催して、来年に繋ぐことが大事」数パーセントでも可能性があるのなら準備を始めよう―「『期待しているよ!』みたいな周囲の空気が、実施に向けてはずみになったかなと思います」と松宮さん。イベントを辞めるわけにはいかない!開催に向けて実行委員会は始動しました。

あのライブの醍醐味にこだわるために

実行委員2

 これまでのやり方が通用しないウィズコロナでの開催。会場を7会場に絞り、ルールを決め、クラスターを発生させないよう綿密な対策を講じました。それでも最後までこだわりたかったのは、観客を入れてのライブでした。

 例えば野球やサッカーなどは、球場の観客よりもテレビや配信などのコンテンツとして楽しむ人が圧倒的に多いもの。甲子園球場では、観客上限が収容人数50%の約2万人であっても、配信によって10%の視聴率を確保できれば1,000万人の観客が見込めます。ジャズライブの醍醐味は、たとえ小さな規模でもダイレクトに響いてくる音とリズム、そして演奏者の息遣い。スピーカーから流れる演奏とは比べものにならないほど、得られる高揚感は違います。回を重ね、演奏者と観客が作り出す生演奏ならではの魅力を誰よりも知る実行委員は、「ライブを楽しみたい」その希望を叶えるべく、準備を重ねました。第二波、第三波が来たら中止せざるを得ない―細心の注意を払い、手探りながら祈るような日々でした。

人の笑顔が継続の原動力になる

開催当日

 今までに経験のない複雑な手続きにもかかわらず、演奏者や協賛者は協力的で、むしろねぎらいの言葉をかけてくれる人も多かったといいます。事前予約によって訪れる観客は、名古屋や奈良、沖縄からも。

 第12回大津ジャズフェスティバルは、2日間にわたるステージが無事に幕を閉じました。丹羽さんは話します。「自分が辞めさせてはいけないと思っています。何より楽しんでいるお客さんの顔を見ることが自分の元気につながる。そこがいちばん大きいのではないでしょうか」

 今回の成果は、イベントをとりまくたくさんの人の力によるもの。これまで交わしてきた数々の笑顔と人々の期待、そして実行委員の信念。どのような状況下においても、いちばんの原動力となっているのかもしれません。「来年はしっかり恩返しをしたい」また大津の街に陽気な音色と人々の賑わいがあふれるように。想いは未来へと続いています。

大津ジャズフェスティバル

オフィシャルサイト:https://otsu-jazz.jp/index.html