#34
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日本最古の渓流魚の里、
醒井養鱒場。

第34回
米原市上丹生「醒井養鱒場」


色とりどりの花々が咲き誇る霊仙山から湧きいずる宗谷川。その清流に沿って広がる醒井峡谷に、「醒井養鱒場(さめがいようそんじょう)」はあります。イワナ、アマゴ、ニジマス、そして琵琶湖の固有種であるビワマスが群泳する日本最古級のマス類増養殖施設であり、深山幽谷に抱かれた“日本の渓流魚の里”です。

明治に設立されたビワマスの県営ふ化場

日本で最も古い養鱒場

 米原市にある醒井養鱒場は、日本で最も古い養鱒場の一つです。琵琶湖の固有種である希少なビワマスの県営ふ化場として、1878(明治11)年に設立されました。

 その後、アメリカから輸入されたニジマスの養殖を開始し、日本の在来魚であるアマゴやイワナの種苗生産供給にも着手するなど、時代とともに事業形態や体制を変え、現在は指定管理者である滋賀県漁業協同組合連合会とともに、県の養鱒振興および河川漁業振興の中心的な役割を担っています。

琵琶湖は世界有数の古代湖

古代湖 琵琶湖

 現生で最も古い湖は、およそ3000万年前に誕生したとされるロシアのバイカル湖。次いで、アフリカ大陸の南東部に位置するタンガニーカ湖(500~2000万年前)です。このような長い歴史を有する湖を古代湖といい、地球上に20ほどしか存在しません。

 琵琶湖は、古琵琶湖の時代を含めると約400万年、現在の琵琶湖が成立してからでも約40万年の歴史を持つと考えられる、世界有数の古代湖です。

 古代湖に共通してみられる特性は、固有種が生息しているということ。世界でそこにしかいない種です。琵琶湖も、その長い時の流れの中で固有種を育みました。現在、琵琶湖に住む水生動植物は1700種以上とされていて、うち約60種が固有種ですが、魚類に限ればビワコオオナマズやニゴロブナなど16種。その希少な1種がビワマスです。

マザーレイクから母なる川へ

ビワマス

 ビワマスはサケ科の淡水魚で、大きい個体だと体長60センチメートルに達します。深場の冷たい水を好み、琵琶湖の中でも水温が低い湖北を主なすみかとしています。また、サケと同じように母なる川への回帰本能があります。

 ビワマスがふ化するのは琵琶湖の流入河川です。秋から冬にかけてが産卵期で、川で生まれた稚魚が春になると湖水へ下り、小アユ、イサザ、小エビや水生昆虫などを食べて成長します。そして3年から4年で成魚になると、生まれ故郷の川へ遡上し、卵を産んで一生を終えるのです。

琵琶湖の漁と滋賀の食文化

滋賀の食文化

 海のように広大な琵琶湖ですが、県外の人から見れば、漁のイメージはあまりないかもしれません。しかし、その歴史は古く、琵琶湖の漁は縄文時代に始まったといわれています。琵琶湖は広いだけでなく最大水深が約104メートルあり、さまざまな層に生息している魚に合わせて多くの漁法が用いられています。

 ビワマス漁では、湖中に網をカーテンのように張って捕る「刺網漁業」や、トローリングで釣り上げる「ひき縄釣漁業」が行われています。近年の漁獲量は20トンから50トンで推移し、県内でも流通量が限られる希少な魚であることから“琵琶湖の宝石”とも称されます。

 その宝石の身は鮮やかなサーモンピンクで、しかしサーモンほど脂っぽくなく、それでいてマスよりも脂が乗っていて、とても美味。刺し身はもちろん、押し寿司、塩焼き、煮付け、フライなど、さまざまな調理法で味わうことができます。夏が旬ですが、秋雨の時期に川を登る産卵期のビワマスはアメノイオ(アメノウオ)と呼ばれ、これを炊き込んだ「アメノイオご飯」は滋賀県の無形民俗文化財に指定されている郷土料理です。

 ビワマスは希少な上に鮮度が命なので、食べられるのは事実上ほぼ県内に限られます。また、10月から11月は禁漁となるため、天然物を楽しめるのは9月まで。ビワマス漁は“守りながら捕る”漁なのです。

遊べる学べる醒井養鱒場

遊べる学べる醒井養鱒場

 醒井峡谷は、国の名勝にも指定されている山紫水明の地です。琵琶湖国定公園の霊仙山から湧き出る伏流水が宗谷川となって流れ、周囲の山々も春は桜、夏は新緑、秋は紅葉と、四季折々に美しい風景を見せてくれます。

 宗谷川の河川敷に広がる醒井養鱒場には、その清流の水を満々とたたえた大小80以上の池があり、ビワマス10万尾、ニジマス86万尾、アマゴ45万尾、イワナ47万尾が大切に育てられているほか、幻の魚イトウや古代魚チョウザメなども展示飼育されています。

 ここは養鱒場であると同時にレジャースポットであり、また体験学習施設でもあります。約19平方メートルの敷地には「ルアー釣り場」や「えさ釣り場」、魚と触れ合える「ふれあい河川」、ミニ水族館がある「さかな学習館」、ビワマス料理が味わえる料理店や売店など、多彩な施設が点在していて、県内外からファミリーを中心に多くの観光客が訪れます。

 「最近の子どもたちは、魚を切り身でしか見たことがないという子がとても多いですが、ここで泳ぐ魚の姿を見て、優しくふれあって、楽しく遊びながら生命の大切さを学んでほしいと思います。自分で釣った魚を塩焼きで食べることもできるので、食育にも役立つ施設です。魚嫌いだった子どもが、おいしそうに食べていますよ」と、観覧課主任の神鳥明美さんが教えてくれました。親子で楽しく学べる教室や季節のお祭りイベントなども定期的に開催されています。

滋賀県醒井養鱒場

〒521-0033
滋賀県米原市上丹生

TEL: 0749-54-0301(管理事務所・観光案内)