#29
#29

ホンモノのカフェ文化を湖国に
「COFFEE WORKS PLUS」

第29回
唯一無二のエスプレッソ 「COFFEE WORKS PLUS」


豊かな山、清かな水、熱き思い。
それらが一つに溶け合って、唯一無二のコーヒーが生まれます。
濃褐色の深い味わいは、至福のひととき。

コーヒーの〝豆〟知識

コーヒーの花

種をまいて約3年で成木になり、真っ白な花を咲かせます。そこに小さな緑色の実がなり、開花から約8カ月かけて真っ赤に熟すと、収穫の時期です。
コーヒーチェリーと呼ばれる実を一粒一粒、丁寧に手摘みします。収穫した後は脱肉、水洗、乾燥、脱穀、選別などの工程を経て、ようやく生豆を得ることができます。

コーヒーの発祥や歴史については諸説ありますが、豆をいり、煮出して飲料とするようになったのは13世紀頃とされています。当初はアラビアを中心にイスラム教の国々で、主に薬用として飲まれていました。17世紀頃になるとヨーロッパへ広まり、18世紀後半に日本へ伝わりました。

モカ、キリマンジャロ、コロンビア、ブルーマウンテンなど、お店にはたくさんの種類のコーヒー豆が並んでいます。喫茶店に入ればブレンド、アメリカン、カフェオレ、エスプレッソといった多彩なメニューがあり、入れ方もドリップ式、サイフォン式、フレンチプレス式など多様です。さらにいえば、豆の焙煎方法や挽き方にも種類があり、一口にコーヒーといっても、その味わいと同様に極めて奥が深いのです。

びわ湖源流の郷にて

比良山と琵琶湖

滋賀県の北西部に位置する高島市は、湖沼面積を含むと県で最も大きな市です。雄大な山々を従えたこの地は、琵琶湖の水の約3分の1を生み出す「びわ湖源流の郷」として知られ、水を生かし、水に生かされてきた人々の歴史と文化が今に息づいています。その一つが、新旭町針江に見られる「川端(かばた)」です。

比良山系を源とする安曇川の伏流水が豊富に湧き出る新旭町の針江地区。もちろん上下水道も整備されていますが、〝川端のある暮らし〟が残る集落です。

川端とは、湧き水を利用して家の中などにつくられた〝いけす〟のような水場のことで、今では珍しい昔ながらの生活様式、古き良き日本の原風景だともいえるでしょう。冬はほんのり暖かく、夏はひんやりと冷たく、スイカやトマトを冷やす光景も見られます。

川端は、地下水が湧出する元池と、それに続く坪池・端池があり、最もきれいな元池は飲み水や炊事に用い、坪池は野菜洗いや洗顔に使い、端池では食器類を洗います。端池には鯉や鮒が泳いでいて、残飯を餌にするため水が汚れません。というよりも、水は決して汚さないのが川端の約束事なのです。各家庭の端池の水は、集落内に張り巡らされた水路を通って針江大川へ流れ、やがて琵琶湖へと注ぎます。そしてまた、雨や雪となって自分たちの元へ戻ってくるのです。すべてがつながっているからこそ、自然や水を生命のごとく大切にしているのでしょう。200年の歳月を経て湧き出るこの水を、人々は「生水(しょうず)」と呼んでいます。

高島の名産と呼びたいエスプレッソ

COFFEEWORKSPLUS

日本酒、醤油、味噌、鮒寿司̶̶。高島市の特産物です。すべて、清らかな水があってこその豊潤な味わいです。そんな高島市新旭町に、知る人ぞ知るカフェがあります。

「COFFEE WORKS PLUS」は、神戸の元町で「Espresso bar PLUS」として約5年営業した後、2014年に現在地へ移転。店名も新たに自家焙煎のコーヒー専門店としてオープンしました。神戸ではさまざまなメディアでも紹介された人気店でしたが、店主の奥様の実家がこちらだったこともあり、移住を決めたそうです。

周囲はのどかな田園風景。観光地でも駅前でもない、静かで落ち着いた場所です。しかも、お店は道から少し奥まったところにあり、知らなければ、地元の人でも通り過ぎてしまうでしょう。何かのついでに立ち寄るのではなく、一杯のコーヒーを目当てに人がやってくる。それが、COFFEE WORKS PLUSです。その外観は、都会のしゃれたカフェとは一線を画す、飾り気のない店構え。けれど店内は、木を基調とした優しい雰囲気のインテリア。イタリア製の焙煎機とエスプレッソマシンは、年代物とは思えないほど手入れが行き届いています。そして、国内流通量わずか8パーセントというスペシャリティーランクの豆を自家焙煎し、清かな水を用いて淹れるコーヒーは、高島の隠れた名産と呼びたくなるほど。ドリップコーヒー、カフェモカ、カプチーノなどメニューは豊富ですが、中でもエスプレッソは絶品です。

「エスプレッソはイタリア発祥のコーヒーで、水が硬水だったことから生まれたといわれています。ドリップ式のように重力ではなく、マシンで圧力をかけてコーヒーを落とします。だから濃厚で少量。フィルターを通さないのでオイルやアロマもよく出ます。ミルクを入れても、ふくよかな味と香りが楽しめますよ」と、店主の山根将さんが教えてくれました。

唯一無二の一杯を求めて

唯一無二の一杯

喫茶店といえば紅茶やジュースもあって、トーストやパスタが食べられて、新聞や雑誌を読んでくつろげるというお店が一般的でしょう。もちろんそれが喫茶店の良さなのですが、山根さんのスタイルは少し違います。

「コーヒーを極めていくうちに、コーヒー以外のサービスは必要ないと感じるようになった」と山根さんはいいます。コーヒーの奥深さを思わせる言葉です。しかし、そのスタイルを、うんちくや作法などをお客さまに押しつける気などまったくありません。

「自分がおいしいと思うコーヒーが一番ですよ」と山根さんは笑います。みんなにおいしいコーヒーを飲んでもらいたい。
ただそれだけの思いなのでしょう。

高島の水を得て、さらに研ぎ澄まされたCOFFEE WORKS PLUSの一杯。まさに、ここでしか味わうことのできない唯一無二のコーヒーを、あなたもいかがですか。

「COFFEE WORKS PLUS」

滋賀県高島市新旭町藁園1327-3

https://coffeeworksplus.wixsite.com/0221