#17
#17

オホーツクを越えて、22度目の渡り。
湖北町山本山のオオワシ。

第17回
「山本山のオオワシ」


毎年冬になると、彼女は“独り”で山へやってきます。遠い国から、海を越えてやってきます。
 人間が憧れ続ける大空を、自由に羽ばたく鳥たち。世界には、およそ1万種の鳥類が生息しています。ペンギンのように飛べない鳥もいますが、暖かい土地を求めて地球半周分もの距離を飛ぶ鳥もいます。通称、渡り鳥です。ツバメやカッコウのように、春になると日本ヘやってきて繁殖し、そして南の空へ去ってゆく鳥が夏鳥。ハクチョウやカモのように、日本より北の国で繁殖し、冬になると日本へやってくる鳥が冬鳥です。また、シギやチドリのように、春と秋に日本へ立ち寄る旅鳥という仲間もいます。

琵琶湖は野鳥の楽園

渡り鳥と琵琶湖
渡り鳥と琵琶湖

 琵琶湖でも毎年たくさんの渡り鳥が見られます。冬鳥は、シベリアから家族で渡ってくるコハクチョウ、カムチャツカ半島から飛んでくる天然記念物のオオヒシクイ、ユーラシア大陸に広く分布するユリカモメなど。夏鳥は、南方からツバメ、アマサギ、オオヨシキリなどが飛んできます。自然の宝庫である琵琶湖は野鳥の楽園でもあり、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地」としてラサムール条約湿地に登録されています。特に冬は10万羽以上の水鳥が琵琶湖で過ごします。

 また、日本では約630種類の鳥類が記録されていますが、その半分以上の約340種が滋賀県でも記録されています。

山本山のおばあちゃん

山本山のおばあちゃん

 山にも渡り鳥はやってきます。山本山のオオワシです。

 山本山は、琵琶湖の東岸にそびえる標高約324メートルの山。賤ヶ岳から続く山麓の南端に位置し、かつては城が築かれていました。頂からは雄大な湖景が広がります。

 その山本山でオオワシが発見されたのは1992(平成4)年1月のこと。「湖北野鳥センター/琵琶湖水鳥・湿地センター」によると、それまでは珍しい冬鳥として数例の記録があるだけでしたが、以来、山の周辺で毎年冬、オオワシが見られるようになったといいます。

 現在、山本山に飛んでくるオオワシは、1998(平成10)年に初めて確認されました。翼の下面の白い羽根模様が特徴で、「山本山のオオワシ」としては二代目です。性別はメス。年齢は不詳ですが、初めて見たときにはもう成鳥(6歳以上)だったため、28歳以上であることは確実だそう。人間でいえば80歳くらいです。人々は親しみを込めて、「山本山のおばあちゃん」と読んでいます。22度目の冬、今年も彼女は“独り”で山へやってきました。

おばあちゃんは琵琶湖へ狩りに

おばあちゃんは琵琶湖へ狩りに

 山本山のおばあちゃんは、毎日1、2匹の魚を捕って食べています。最も多いのがブラックバスです。オオワシが本州に現れるようになった一つの要因として、この外来魚の存在が挙げられています。琵琶湖の在来魚が冬眠状態にあるなか、冬でも泳いでいる活性の高いブラックバスなどに目を付けたのではないかと、地元の漁師さんたちは話しています。山本山のおばあちゃんは、どうやら狩りが得意なようです。

〈オオワシ〉

  • 体長:約100cm
  • 翼開長:約240cm
  • 体重:6~9kg

 ロシア東部のオホーツク海沿岸、カムチャツカ半島、サハリン北部などで繁殖し、冬に南下して朝鮮半島、ロシア沿海地方、カムチャツカ半島、北海道、本州北部などで越冬する。現在、生息数は5000羽前後と推定されている。天然記念物。絶滅危惧Ⅱ類(環境省第4次レッドリスト)。